旅行2(街並み)
前回は「旅行とはいえ学ぶこともあったよ」的な感じで書きましたので、今回はその続きです。
さて、早速いきましょう。
まずはこちらの地獄めぐり。(写真左が海地獄、右が竜巻地獄)
現地へ行くと観光者が目につきます。そして、街を見渡すといろんなところから湯気が出ており、そこらじゅうから温泉が湧き出ているであろうことが容易に想像出来ます。そして観光者である僕たちは、「温泉地に住んでる人っていいよなぁ。いつも温泉で疲れを癒すことができて」 と思うわけですが、昔からそういう環境ではなかったようです。
その昔、村の人々はこの温泉に相当苦しめられたそうです。
元々この周辺一帯は田んぼや畑があった土地。まぁ、日本ってほとんどがそうですよね。
なので、農業によって生計を立てていたそうですが、畑のド真ん中から突然温泉が湧き出てきたり、竜巻地獄のように100度近い熱湯が吹き上げてきたり。すると熱湯が畑に流れ込み、当然ですが作物は枯れてしまいます。頑張って育てた作物がただの生ゴミになってしまうわけですね。そして酷い場合は高さ100m近くまで温泉が吹き上がる。風が吹けば隣やその隣の農地にまで被害を与えてしまうことがあり、村民同士の争いも絶えなかったそうです。それで、こんな地獄みたいなところに住んでいられるか!!といって村を離れる人もいたほど。
その当時の写真を見れる資料館があるのですが、その写真にはやはり土地の(高低差が)高い場所に住居を建てている写真ばかりが目に映りました。また、農地周辺の民家においては、たった一棟だけで孤立していることが多かったです。おそらく、隣地からの被害を避けるための場所を選んだのでしょう。
こういった環境においては、どれだけ立派な家を建てるか。よりも、どれだけ被害に遭わない状況を作り出すか。また安心して住める居場所を作るか。が求められますよね。
その地域、周辺の環境によって、求められる建築の条件が変わるものだと改めて考えさせられました。
僕は、周りの人に「地方での仕事がしたい!」とずっと言っています。
これは、独立する前から考えていたこと。
都心部ではなく「地方」なのは、その地方によって様々な風習や文化が存在するからです。東京にはたくさんの面白いものがあります。
しかしながら、表には出ておらず隠れたたくさんのおもしろさが、地方にもあると思っています。そんな地方ならではの風習や個性を踏まえて、住宅や建築を作れることをとても楽しみであると感じているからです。
そして、もう一つ。今回訪れた黒川温泉では、建築計画の大切さを強く感じました。
通常、温泉街というと旅館がたくさん並び、その近くに商店街がある。そしてその商店街にお土産屋さんやお食事処がまとまって並んでいる。そして観光客は旅館街ではゆっくり休み、商店街に行きお土産や地域の郷土料理を楽しむ。ということが多いかと思います。
ところが黒川温泉は、ちょっと違います。
ここでは、温泉街の中にお土産屋さんやお食事処が点在しています。つまり、旅館があってその隣にお食事処があり、また隣に旅館があり、そのまた隣にカフェがあるというような感じです。そして、旅館やお土産屋さんなどの派手な看板はなく、統一された共同の看板が並び、お互いを支え合うかのように心地よい一つの温泉街となっていました。
これは黒川温泉の「黒川温泉一旅館」をビジョンとし、「一件の繁盛宿を生むのではなく、地域全体が一つの旅館。道は廊下であり、各旅館は部屋」という考えからきているそうです。
黒川温泉では、それぞれの旅館に500〜800円で立ち寄り湯に入ることも出来ますが、一方「入浴手形」というものがあり、1300円で3箇所の好きな温泉に入ることができます(ちなみに有効期限は半年なので、一度で使い切る必要もない)。
またその温泉がそれぞれ個性的で、中には大露天風呂があるかと思えば、十人ほどが入れる洞窟風呂があったり、温泉街を見下ろせるような個性的な露天風呂があったりします。なおほとんどの温泉宿に露天風呂がついているので、また違う季節にも来て自然を楽しみたい。と思えるようになりますし、泉質も豊富です。
なので僕らは、まず自然を満喫できる露天風呂に入り、その近くのカフェで熊本のジャージー牛乳で作ったソフトクリームを堪能し、次は珍しい洞窟風呂に。夕方旅館でゆっくりしたら、ちょっとそこまで出掛ける感覚でお土産屋さんに。というように、満喫してきました。
旅行1日目は前述の通り湯布院の旅館に泊まったのですが、
こちらは旅館と商店街(飲食店とお土産屋さん)がしっかり区別されていたので、旅館で夕食の時間となる18時以降は商店街もほとんど閉まり、人と会うこともほぼありませんでした(これはこれでお店と旅館の効率化を考えた結果なので、もちろん良いと思いますが単に僕の好みの問題ですかね)。
一方こちらの黒川温泉は、夜9時くらいでもひっそりとした道端(黒川温泉の廊下)で、地元の人と旅行客が静かに談笑している。という居心地の良い環境が生まれており、観光地でありながらもホッとする居場所のように感じました。
考え方の違いによって建築(今回は街)の計画も変わり、そういった視点から見ると対照的な2つの温泉地を巡ることになりました。
ちなみに、黒川温泉の「入浴手形」のアイディアってどこから来たんだろう?と調べてみました。黒川温泉は、実は立地が良いとは言えません。山間部に位置し熊本空港からも、そして温泉地として有名な別府・湯布院からもそれぞれ車で1時間30分ほどかかります。そこで、「個性豊かな温泉街にしよう」と露天風呂を中心として様々な個性を打ち出していく方針で進めていったようですが、その中に(立地的に)どうしても個性的な露天風呂を作れない宿があったそう。そんな宿を救うために考え出されたのがこの入浴手形で、それ街の活性化に繋がったのだとか(いまではこの入浴手形は、黒川温泉組合の収入の70%以上を占めているらしい)。助け合いの精神が街を救うって、めちゃくちゃあったかい考え方ですよね。
僕も地方出身なのですごく共感するのですが、友達が集まる。親戚が泊まる。といった他人のためことも尊重して住まう。ことが地方・田舎の考え方にあるんですよね。
僕はこんな地方のあり方が好きなんだ。と再確認することになった大分・熊本旅行でした。
気になった方は是非、別府・湯布院・黒川温泉に行ってみてください。
かなりオススメです。